小説プチモ物語


プチモライアーゲーム2017

ある撮影の日の休憩(けい)中。

その日参加したプチモたちは、控え室にて、思い思いに寛(くつろ)いでいた。

茉佑「ねぇねぇ、ここはちゃん。なんかゲーム考えてよ。このテーブルで、みんなでできるやつぅ」

ふいに茉佑が、いつもの屈託(くったく)ない目で甘えるように、隣に座る後輩ここはに、おねだりした。

ここは「はい?」

ここは、それまで読んでいた文庫本から目を上げると、栞(しおり)をはさんで閉じて、テーブルに置く。

そして、大きな瞳で茉佑を見つめる。

茉佑「だーかーら、ゲームだよゲーム。ほら、見てみ。みんな退屈してるもん。まゆたんも、ヒマでヒマで(ふぁ〜〜)」

そこまで言うと、小さな口で可愛らしいあくびをした。

早朝から始まった今日の撮影も、今はお昼休み。

すでに、お弁当を食べ終わったプチモたちは、暖房が効いてポカポカ暖かいこの部屋で、読書に没頭するここは以外、暇をもてあましていたのだ。

ここは「あー、そういうことですか」

そう言うと、ここは小首を傾げつつ、人差し指を唇に当てて、さっそくなにやら考え始めた。

ここは 「うーんと・・・」

まるで小動物のように可愛らしい仕草である。

これに茉佑。

隣で考え込む、ここはの返事を聞く前に、さっそくパンパンと手を鳴らして。

茉佑「はーい、みんな集合〜! いまから、ここはちゃんが、ゲームやりま〜す!」

午後の撮影開始まで、まだ時間は十分ある。

春果「え〜!? なーにー?」

莉那「なにが始まるんだべ?」

乃亜「What begins?」

部屋にいあわせたプチモたちは興味津々。

茉佑たちのテーブルに、一斉に集まってきた。










集まった面々は―――。

主催者の茉佑と、考案者兼進行役のここはを中心に、春果&莉那の年長コンビ。さらには伶奈、そして乃亜の6人でテーブルを囲む。

ややあって。

ここは「うん、いける」

ここはは静かにつぶやくと、愛用する黄色のバイラビットのバッグから、携帯用マグネット囲碁セットを取り出した。

と、次の瞬間。

乃亜「What happened?」

乃亜は見逃さなかった。ここはのチャームポイントでもある"くりくりの大きな目"が、かすかに暗く光ったのを。

他のメンバーも、それに気づいたのか、それとも気づいていないのか。

期待と不安の入り混じった眼差しで、ここはの一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)をジッと見つめている。

さっきまでの、緩(ゆる)みきった昼下がりの空気が、いつの間にか一変していた。

これから、何か怖ろしいことが起こるのではないか。カンのいい乃亜は、そう直感した。








ここはが口を開く。

ここは「えっとですね。どなたか、ハンカチか何か、持ってないですか? できれば濃い色で、厚手のものがいいんですけど…。なるべく透けないようなやつで」

これに、莉那。

さっと、柄(がら)もキャラも付いていない単なる白色のハンカチを差し出す。実用性重視、いかにも現実主義者の彼女らしい

莉那「わたすのでええが? ほれ、使ってけろ」

しかし、ここはは受け取らない。

ここは「センパイ! これ…ちょっと薄くないですか?」

ここはにとって、莉那は年上でありプチモとしても大先輩であるが、そこはまだ恐いもの知らずの小5の女の子。

あからさまに不満顔をすると、ハンカチを莉那につっ返す。

莉那「まいなぁ(泣)」

莉那、返されたハンカチを受け取るや、自慢のほっぺをますますふくらませて、悲しそうな表情になる。

と、ここで、カタンとイスを鳴らしつつ、伶奈が立ち上がる。

伶奈「じゃあ、あれなんてどうかな? ほら、あそこにあるテーブルクロス」

何事にも気が利いてフットワークの軽い伶奈が、パッと席を立って走り、部屋の隅のテーブルの上に、キレイに畳んで重ねてあった、モスグリーンの厚手の布を持って戻ってきた。

伶奈「はい」

ここはは、それを無言で受け取ると、先ほどテーブルに置いた白の碁石に被せ、さらに続けて黒の碁石にも被せてみて、そして満足げにうなずく。

ここは「うんうん。だいじょうぶですね」

こうして、準備が整った。

春果「わぁ〜!? 一体、どんなゲームが始まるん?」

最年長ながら無邪気で好奇心旺盛(おうせい)な春果。待ちきれないといった感じで、離れ目の両方を真ん丸にしつつ、隣に座る莉那をひじでつっつき、小声で話しかけている。

ここは「静かにして下さい!」

これにここは、すかさず指を唇に当てて注意する。

春果「・・・はぃ」

もはやすっかりこの場はここはペース。エース春果といえども、たじたじである。










いくぶん芝居がかった口調で、ここはが語りだす。

ここぞとばかり、事務所の演技レッスンで習ったことを実践しているようだ。

ここは「えー。いいですか、みなさん」

一呼吸おき、たっぷりと時間をかけて、みんなを見回しつつ。

ここは「いまからここはが配る、白と黒の碁石を1つずつ持ってください」

そう言うと、ここは、かちゃかちゃと音を立てて碁石を配り始めた。

みんな順番に手を伸ばして、これを受け取る。

そして、全員に行き渡ると、再びここは。

ここは「えっと、メモ用紙っていうか、紙切れみたいの、ないですかね? 小さいのでいいんだけど。小さいの、できたらたくさん何枚も」

もはや、普段は先輩はもちろん、同期に対しても基本敬語の「ですます調」で丁寧に話す、ここはであるが、今は興奮からか、徐々にタメ口になってきた。

春果「へぇ〜。なんに使うの?」

春果が尋ねる間に、伶奈は部屋の隅に置いた自分のカバンを取りに走る。

伶奈「はい。わたしの使っていいよ」

アイドルヲタで有名な伶奈が、大好きなエビ中の公式グッズであるオリジナル学習ノートを差し出す。

ここは「あのこれ、何枚か破ってもいいですか?」

伶奈「どーぞどーぞ」

ここはは、伶奈から許可の返事を受けると、ノートの後半部分、まだ記入されていない白いページを、手早く切り取り始めた。

さすがに、手芸料理クラブ所属は伊達ではない。人一倍、手先が器用なのである。

そんなここはの手元に、みんなの注目が集まったとき。

≪バタン≫

扉が開いて。

真奈「ねぇねぇ、何してるの?」

手に飲み物の入った紙コップを持ちつつ、璃乃と真奈が部屋に入ってきた。

2人は、キラチャレ出身で、おなじエイベックス所属。落ち着いたオトナな雰囲気も共通で、性格も合うため、こうして一緒に行動することも多い。

おまけに、「美脚三姉妹」の次女と三女としてスタイルも抜群。今をときめく次期エース候補の"推されコンビ"でもある。

茉佑「あのね、あのね。ここはちゃんがね、新しいゲーム、やるんだよー♪ アハハハ☆」

茉佑が、まるで自分の手柄がごとく璃乃たちに得意げに説明する。

対する璃乃は、お子ちゃまのようにキャッキャとはしゃぐ茉佑を、やんわり無視しつつ、その高身長で伶奈の肩越しにテーブルを覗(のぞ)き込む。

すると、白と黒の碁石にグリーンのクロスという異様な組み合わせが目に入り、興味を引かれたようだ。

璃乃「なんかよくわかんないけど、面白そう」

声色は冷静ながらも、関心を持ったらしい璃乃の反応を横目で確認したここはは、まんざらでもない様子。

ここは「ちょうどいいです。お2人とも、参加しませんか?」

加わるように誘ってみる。

真奈「じゃあ、うちらも入れてよ」

すっかり乗り気になった2人を見て、ここは、心なしか口元が緩む。

ここは「よかった。2人が入ってくれると中和されるかもです。このゲーム、やっぱり少人数だと、ちょっとなんて言ったらいいかな。―――うん、生々しいから。しかも、この6人だけだと、全員がプチモオーデ出身だし」

さらに続けて。

ここは「キラチャレ出身で、ニコプチにそれほど興味ないっていうか、なじみの薄い人たちが入ってくれると、少しは緩和(かんわ)されるかもです」

言葉は丁寧であるが、やや棘(とげ)のある言い方だ。

茉佑「はいはい、決まり〜♪」

こうして、2人をここはが招き入れたので、その場にいたみんなが席を詰めて、イスを2つ、テーブルの周りに付け足した。

そして2人も碁石も受け取り、準備完了。

いよいよスタート! と思ったのもつかの間。

なにやらジーッっとこちらを見つめる熱い視線に気づく、ここは。

ここは「ん!? な…なに、この妙な視線!?」

<ジーーーッ>

さっきから、自身の存在感を消しつつ、すぐ隣のテーブルにひとりで座り、こっそり、ずっと、一心に、最初からここはたちのやり取りを、ただただ見つめていた1人の女の子。

いかにも、"混ざりたいオーラ"を醸(かも)し出している。

視線の主を確認すると、ここはは1つ大きな溜め息をつく。

そして、その少女に向かって優しく語りかける。

ここは「はぁ。。。リンリンもやる?」

凛「うん♪」

凛は、パッと笑顔になると、大きくうなずいた。










こうして、ゲームは開始される。

ここは「これで9人ですかね。1人2問としても合計18コ。うん、けっこうありますね」

ここは、ひとり頷くと、颯爽(さっそう)と立ち上がり、説明を始める。

ここは「じゃ、これから、ここはがみんなに紙を2枚ずつ配ります。これに各自、みんなが普段どう思ってるか訊きたいこと、知りたいことを、質問形式で1枚につき1コ、書いてください。それも、誰もがイエス・ノーの2択でハッキリ答えられるやつを、です」

みんな、きょとんとした顔で、ここはの説明に聞き入っいている。

代表して、莉那が尋ねる。

なんだかんだいって、さすがに頼りになる存在である。

莉那「ぶっちゃけ、心理ゲームみたいなもん思ってええが?」

しかし、ここは。直接それには答えず、鼻で小さく笑うだけだった。

ここは「さぁ。みなさん早く書いてください。で、書いたら紙を小さく畳んで、ここはによこしてください」

そう言うと、ここはがさっそく自分で書き始めたので、なんとなく、みんなもそれに倣(なら)う。

こそこそと、みんなそれぞれ手元を隠しつつ、真剣な面持ちで、紙に質問を書き込むと、あとは小さく畳んで、ここはの方に押しやる。

やがて全員の紙が、ここはの前に集まり、ちょっとした山となった。

ここは「はい、みなさんありがとうございます」

目の前に集まった紙切れを、くしゃくしゃと軽く混ぜ合わせると、手元のコーヒーカップの受け皿の上に乗せる。

そして、真奈に視線を移して。

ここは「じゃ、真奈ちゃんに頼んでいいですか?」

真奈は、突然自分が指名されたのでハッと顔を上げて、ここはを見る。

真奈「ん? うち?」

ここは「そうです。あのですね、真奈ちゃんには、今からここにある質問を順番に読んでもらいたいんです。プチモ歴が長かったり、オーデ同期だったりすると、どうしてもお互い、筆跡とかで誰が書いたか分かっちゃうじゃないですか。そうすると、気まずいっていうか、面白くないですから」

続けて。

ここは「その点、真奈ちゃんなら、この中では比較的新しい部類だし、オーデ出身じゃない単独加入だし、住んでるのも遥かかなたの熊本だし」

さらに続けて。

ここは「しっかりしてて、頭もいいし。こういう役、まさに適任なんです」

この説明を聞いた真奈、とくに後半部分については謙遜(けんそん)しつつも、とりあえず断る理由も無いので、みんなの紙の乗った皿を受け取る。

ここは「さて、と」

ここはは、改めてみんなを見回した。

その他の8人は、やや緊張した顔で、ここはを見ている。

ここは「これから、真奈ちゃんに質問を読んでもらいます。そしたらみんな、その質問に、必ず正直にイエス・ノーで答えてください。もちろん口で言うんじゃないです。はい、これを使うんです!」

そう言って、ここは、手に黒と白、2つの碁石をつまむと、高らかに掲げててみせた。

ここは「白がイエス。黒がノー。いいですか?」

みんなが、ルールを理解するのを待つため、ここで多少の時間をおく。

その間を利用し、ここはは部屋の隅に置いてあった、撮影小道具として使われる、アルミ製の金ダライを取って来た。

そして、席に戻ると、そのタライに、グリーンのテーブルクロスを掛けて、ふたをしてみる。

ここは「自分の回答を表す色の碁石をそっと握って、クロスの下からこの中に入れる。こうです」

実際に、やってみせる。

<カラン>

乾いた音がした。

ここは「それで、みんなが入れ終わったら、クロスを掛けたままガシャガシャとタライをゆすって、碁石を完全に混ぜます。で、最後に、クロスを取ってみんなに公開。こういうルールです。いいですか? 分かりましたか?」

みんなが、ざわざわした。

春果「なんか怖いねー」

春果が、となりの莉那へと小声でささやく。

言葉とはウラハラ。これから始まるゲームが心底楽しそうだ。

それに対し、莉那は無言。名字とは正反対、透き通るような真っ白の肌が、やや上気してピンク色に染まっている。

一方、春果の対面に座る璃乃は腕組みをして、ここはを睨む。

璃乃「けっこう、えげつないゲームじゃない?」

そんな視線に全く動じることなく、ここは。

ここは「フフフ。でも、璃乃ちゃんだって、知りたいんじゃないですか? みんなが心の中でホントは何を考えてるか。みんなから自分はどう思われてるか」

ふと、そんなやりとりを聞いていた乃亜は、なとなくドキリとした。

心の中に抱えている秘密。誰にも言えない本心。

改めて乃亜は、テーブルについている仲間の顔を、さりげなく順番に見回した。

こうして、プチモとして、同じ雑誌のモデルとして、一緒にテーブルについていても、いったい心の底では、みんな何を考えているんだろう―――

「クロハル」だの「メアリン」だの「ミニーズ」だのと、仲良しで括(くく)られていても、せいぜい会うのは撮影のときくらい。

お互い、相手の何を知っているというのだろう。そもそも自分は、この子たちの何を知っているのだろう。そう考えると、止まらなくなって―――。

乃亜「Oh my God」

頭を抱えつつ、つい小声で口に出した乃亜だった。







一方、そんな乃亜とは全く無関係に、会話は進んでいた。

伶奈「あっ! じゃあ、みんなが同じ答え出した時だけ、誰がどう答えたか分かるってことだ!」

相変わらず、カンのいい伶奈。

ここは「そういうことです」

ここは、満足そうにうなずいてみせる。

と、ここで遠慮がちに、いつからかすっかり黙り込んでいた茉佑が割って入る。

茉佑「でもさ、そうなるときっと気まずいケースとかも、出てくるんじゃないかな?」

言いだしっぺの威厳はどこへやら。心配と不安の入り混じった目だ。

これを真正面から受けて、ここは。

ここは「あれ。センパイって、そんなキャラでしたっけ? そんなビビリでしたっけ? ちょっと意外です。っていうか、抜けたいですか? 抜けますか?」

ここはの意外な挑発に、茉佑。さすがに少々ムキになって。

茉佑「抜けないもん! まゆたん、最後までやるもん!」

これに、ここは答えず、さっと視線を移して、乃亜を見る。

全ては計算どおりのようだ。

ここは「さて、と。さっきからずっと黙ってるセンパイは、ちゃんと碁石持ちましたか?」

乃亜「OKネ☆」

さらに隣に視線を移して。

ここは「リンリンは、ちゃんとルール理解した?」

凛「したよ〜♪」

ここは「じゃ、はじめよっか。さ、真奈ちゃん、質問読んで」

ここはは、真奈を促した。

真奈は、先ほどのやり取りを思い、やや戸惑いを隠せない表情を浮かべつつも、皿の上の紙切れの山から、適当に1枚を選び、手に取った。

真奈「いい? じゃ、読むよ」

こうして、その恐怖のゲームは、今年も幕を開けたのだった。
(続く)


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